先週末の演奏会で
ノブロック 弦のセットになっている
低音を使ってみました。
前回お話ししたように、
全部の弦をセットごと同時にではなく、
高音弦のみ先に張ってありましたので
こなれた高音弦に対しての
アクティブ・ダブル・シルバーの低音は
少し硬質かな、と最初のうちは感じたものの
すぐに落ち着いて
深みのある響きになりました。
このノブロック の弦の特徴として、
セットとしてのコンビネーションが
とてもよく考えられている、ということが言えると思います。
SN またはQZ ナイロンのほうも
バイオ・ナイロンのほうも、
セットになっている低音弦、
アクティブ・ダブル・シルバー、
ERダブル・シルバーを張った後は
高音弦もそれまでより音色や響きが明るくなって
ダイナミクスレンジも増えた印象を持ちました。
もう一つは、
低音弦の音色そのものに対する
考え方、ということを思いました。
すごく昔、
1970年代とか80年代は、
弦を張って、それが楽器に馴染んで
落ち着いて、調弦も狂わなくなった頃に
ステージで弾く、
というのが一般的だったようですが、
少なくとも
僕がコンクールなどに挑戦し始めた90年代以降は
わりと新品の低音弦でギラギラ弾く、というのが
定番になってきてました。
ですが、最近、低音弦の素材や性能も向上してきて
すぐに倍音がなくなってしまったり、
へたった感じになることが少なくなってきましたので、
また、昔のように弦を少し長めに張れるようになってきている気がします。
ノブロック の低音弦は、
張りたての金属的な輝きが少し落ち着いて、
擦弦楽器的な音色に近付いたくらいから
真価を発揮するように作られているのかもしれません。
調弦が安定して以降、
弦が安定してからもギターの響きはのびやかです。
ここからは弦のセット全体についての印象です
SNナイロンの方を張ったフレタは
荘村清志さんとのデュオに使いましたが、
弱く弾いても輪郭がはっきりと出せることや、
雑味が少ないのでストロークで伴奏していても相手の音を
打撃音でかき消さないことなどが
とても役に立ちました。
QZナイロンの方を張ったYAMAHAGC82Cは
チェロとのデュオに使いましたが、
こちらも弱音でもはっきりとした存在感、
多めの倍音によるキラキラ感が低音とうまくマッチしておりました。
エリタクスの低音、ERダブル・シルバーは
ナイルガット、カーボン、ナイロン、バイオナイロンなどの
様々な特徴を少しずつ継承したような
(素材的にはあり得ないかもですが)
中性的とも言えそうな
BIOナイロンの高音弦の瞬発力と音色にうまくマッチして、
バロックの通奏低音の演奏にとても効果的でした。
今井さんの8弦ギターの独特なテンション感とも相性が良いです。
弦の振動の仕方にも特徴があり、
リュートやその他の小さめな鍵盤楽器(クラヴィコードetc.)を弾いているような
弦とボディとの打楽器的な共振が気持ちよく導き出せます。