沖仁さんが張っていたノブロック社のフラメンコ弦、
LUNA FRAMENCA(ルナ・フラメンカ)に興味を持ったのがきっかけで
ノブロック社のナイロン弦を試してみています。
その昔、94年に師匠のホアキン・クレルチさんが張っていたのを
留学先のザルツブルグで見たのが
この弦メーカーを初めて知った機会でした。
その時、ホアキンが
「これ、ながもちだし、音いいし、最高だよ」
と言っていました。
みんなその頃は
「クノーブロッホ」と呼んでいたので
てっきりドイツのドイツの弦だと思っていたら....
https://www.siejapan.com/guitar/g_accessory/knobloch/
こちらS.I.E.さんのHPに書いてあるように、
2009年に拠点をスペイン に移したんですね。
今回試しているのは、
何せ30年後ですから
新しいモデルというかラインナップですね。
というわけで、
うちにあるのはこの4種。
僕は弦を張る時、
高音→低音と時間差で張る習慣があるので、
(最近は低音のもちが良くなったので、
高音だけ後から替えて演奏会してる時もある)
まず、各種高音弦だけ張って3日ほど経ちました。
ちなみに、試しているのは全てミディアム・テンションです。
まず、
上の写真のクラシック用のラインナップ3種は、
2種類の高音弦と3種類の低音弦から成っています。
写真左上
300ADN
高音:SNナイロン 低音:アクティブス・ダブル・シルバー セット
写真右上
300ADQ
高音:QZナイロン 低音:アクティブス・ダブル・シルバー セット
写真左下
ERITHACUS エリタクス
高音:バイオ・ナイロン 低音:ER ダブル・シルバー セット
写真右下
LUNA FLAMENCA
高音はSNナイロン 低音はLUNA ダブル・シルバー のセット
ダブル・シルバーっていうのは、
低音弦の巻線の芯線がナイロンとカーボンのコンポジットなのだそうです。
そもそも、僕がこの弦にひかれた動機は、
ルナ・フラメンカの高音弦でしたので、
まず、SNナイロンをフレタ(1964)に張ってみました。
これは思った通りでした。
SNナイロンは昔風の艶やかさと現代的な量感、というか、
質量のある音色が共存しているので、
表面版が松の、しかもボディが横裏板も含めて
全体で振動するタイプの楽器に張れば
とても味わいのある音が出せます。
僕はよく、
この種の古い構造のギター
(製作年が古い、というのではなく、
構造や音に対するコンセプトがオーセンティックな楽器)
には、
人が「え!?」と驚くような、
昔からある弦を張ったりすることがあるのですが、
これらの問題点は、
昔からある弦なせいなのか、
ピッチの安定性に欠けることが多く、
そこは‘味’として受け入れるしかないんですが、
SNナイロンは、その点は現代的に精密な調整がなされていると思います。
次に、
QZナイロンを
現代音楽や他楽器とのアンサンブル、ジャズなどに使っている
YAMAHA GC82C、つまり割とモダンなコンセプトの表面版が杉のギターに張りました。
これも予想通り、というか
滑らかで艶のある、キラキラした現代のギターのサウンドになりました。
最初のうちはちょっとつるつるしすぎる感じがしましたが、
慣れたり、弦が安定したりする頃には
操作性の良さが味わえるだろうと思います。
(追記)弦が安定すると操作性が抜群で
音質も華やかです。
この弦に関しては、
SNナイロンとの比較を同じ尺度で計る意味はほとんどありません。
パスタに‘テフロンダイス’と‘ブロンズダイス’とがあるように、
ギターのナイロン弦にも
クリスタル・タイプとマット・タイプ
(私が勝手にそう呼んでいます)
があるのです。
◎クリスタル・タイプ
オーガスチン弦 全般
(リーガルはちょいマット)
サバレス クリスタル ソリステ(昔からあるやつ)
サバレス ニュークリスタル (ちょっとガラスっぽい感じがするほどクリスタル)
アランフェス
ダダリオ チタニウム
etc.
◎マット・タイプ
普通のダダリオ プロ・アルテ弦
ハナバッハ 全般
サバレス 白ラベル 黄ラベル 赤ラベル(超昔からあるやつ 研磨され気味で激マット)
etc.
それで、
SNナイロンはマット系
QZナイロンはクリスタル系
なのです。
これは正直、僕にとっては
カーボン弦と同じくらい違う弦質なので、
よって、
SNナイロンとQZナイロンは同じパラメーター上で甲乙つけても
あまり意味がありません。
好みの問題です。
今回面白かったのは、
SNナイロンはマット系ですが艶やかさや立体感が豊かで
QZナイロンはクリスタル系なのに落ち着いたまとまりもある、
ということで、じっくり使いやすいと感じました。
QZナイロンの方は、
ダブルトップや杉の楽器など、
中域に音量が寄っている特性を持つ楽器に張ると、
高次倍音が増えて音色感を多彩にすることができるのでは、と思います。
最後に
バイオ・ナイロン、と言われているエリタクスの高音弦を
今井勇一さんの8弦ギターに張りました。
これはなぜかと言うと、このバイオ・ナイロンは
見た目がすでに白っぽくて、
アクィーラのバイオナイロンや、ナイルガット弦を
彷彿とさせるものがあったから。
で、張ってみたら
案の定、
とてもクラシカルな響きです。
バロック音楽とか、19世紀の古典の曲とかにも、
雰囲気が出ると思います。
同時にナイロン弦特有の艶やかな感じも残っています。
この弦も、トーレス・タイプなどの
オーセンティックな楽器に張ってみてもいいかもしれないですね。
僕の8弦ギターはボディ形状はトーレスですし。。。
以上、高音弦だけでこんなに長くなったのは
僕が日頃から異様に高音弦マニアなためで、
低音弦に関してはもう少しざっくりとした印象になる予定です。
それと、
最初にどの弦をどのギターに試すかっていうのは、
見た目の印象もありますが、
沖仁さんのこちらのレポートを参考にして決めました。
皆さんもぜひご参照ください。
https://note.com/jinoki/n/n3d68d9232296