昨日は若い世代のギタリストたちや
製作家の皆さんの集まりにお招きいただいて
お話ししてきました。

みんないろいろ、着々と将来のことを考えていて
頼もしいと思いました。

日本の人口というのは、
ベビーブーマーと言われる団塊の世代が一番多く、
しかもその世代が経験した日本の高度成長期、
オリンピックやら学生運動やら万博やらバブルやら、
そういうものが中心になって形成された価値観というのが
根強い、という側面もないとは言えません。

ギターで言うと、
ちょうどこの団塊の世代の後15年くらいにかけて
クラシック・ギターブームというのが起こり、
世界で活躍したギタリストをたくさん輩出、
海外からは一流のギタリストが来日して
いつも大ホールが埋まるほどの盛況、

という時代を80年代後半までやってきたわけで、

ここで形成された
クラシック・ギターとはこういうもの、
という価値観が今でも強力ですし、
実際、コンサートに来てくださるお客様も
その世代が中心なのですね。

その後90年代くらいから
ヨーロッパでは新しいスタイルの演奏が現れて
それが大体最近まで続いたんですね。

でも日本では
僕を含めほとんどのギタリストが
その前の時代のスタイルをおし進めて
発展させようとしていた、
ということで、なかなかそのコンテンポラリーな
ヨーロッパの様式は入ってきませんでした。

おそらく朴葵姫さんが日本で演奏活動をされるようになってから、
ようやくアマチュアの人やギター教室の先生が
そういうヨーロッパには全然違う感じのギタリストがいるよね、
っていうことを意識的に認識し始めて、
同時期にヨーロッパで勉強してきたギタリストたちが
日本に帰ってきて、
「日本のギターのスタイルは全然ダメです!」
という感じで一生懸命海外の若いギタリストを
招聘したりするようになって、
そのおかげでやっと、
ギターを勉強する子供さんたちも
新しいフェーズに入れた、
ということは素晴らしいことでした。

ところがこの
ヨーロピアンスタイルのギターにも
今(何しろ90年代から30年やってるわけなので)
陰りが見えてきている、というのは否めないんですね。

その理由

①コンクールが増えすぎて優勝してもコンサートの仕事は来なくなった
②唯一と言って良い大学での教育者としての仕事が少子化で減り、
ポストも空かなくなった
③コンクール組とは別に、最初から演奏活動だけで有名になる
新しいパターンの人たちが出始めた。

などいろいろあるんだけど、
結局、コンクールとギター・フェスティバルをやって、
お互いにコンサートを交換し合って、
という90年代からの欧米クラシック・ギターの風習は
コロナでかなり深刻な打撃を受けた、
ということが大きいと思います。


僕はコンクール途中で辞めて帰ってきてしまったので、
日本のギターのスタイルは
お客様とともに古くなっていくし、
その一方で
タイとか中国とかは、
70年代のギターブームがなかったから
日本より遥かに後進国だったんだけどそれが幸いして、
90年代以降のヨーロッパのスタイルには
わりとすぐ順応し、コンクールの優勝者も出せるようになった。
(例えが失礼かもしれないけど
昔行った東ドイツのインターネットが
電話回線からいきなりWifiになったのを思い出します...)


実は5年くらい前までは、
あ〜こうして日本のギターは終わりかもな〜〜
という気持ちもちょっとあったのですが、
ここ最近、ヨーロッパギター界の衰退と、
その一方で
ティーボー・ガルシアやサインス・ビジェガスほか、
クラシック音楽のエージェントと仕事ができるギタリストが出現して、
ちょっとヨーロッパはギタリスト格差社会みたいになっているのを見るにつけ、

あれれ、
これ結局、日本のギターの感じはガラパゴスじゃなくて
ユートピアになれるんじゃないのかな、
と感じ始めております。

今回のDUO×DUOのツアーは
まさにそれが見えたツアーでした。

ここから何を積み重ねて行けるのでしょうね〜。
ありがたいことに
今はそれをどのような音楽や活動でするか、
ということでは悩んでいられないくらい
弾く曲がたくさん。。。

この先2年くらいの間に、
今手掛けているプロジェクトを
どれくらい深く濃厚なレベルでやり遂げられるか、
という荷の重さは感じています。

それらのプロジェクトのお話はまたいずれ。

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カテゴリー 音楽
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