「どですかでん」のメインテーマは
2000年に発売された同名のアルバムの中で
渡辺香津美さんと共演するために編曲したのが最初です。

この時はメイン・テーマをもとに
映画にも出てくる弾むようなヴァンプの後
香津美さんのアドリブが入るアレンジでした。

その後、香津美さん、cobaさん、ヤヒロトモヒロさんと僕のカルテットで
武満さんの映画音楽を演奏するバンドが何年か行われていたときに、
cobaさんによるこの曲のアレンジで、
今回の編曲のリハーサルマークBとCのパートのテーマが使われていました。
「どですかでん」で武満さんを知って心酔し、
師と仰いだcobaさんならではの慧眼がとても印象に残りました。



これは今記憶を頼りにお話ししていますが、
黒澤監督はご自身で映画のサウンドトラックにふさわしい
クラシックの名曲のイメージを予め思い描いてしまわれることがあるそうで、
この「どですかでん」(の多分メインテーマ)も
『ビゼーの「アルルの女」のような曲』、
とリクエストされて武満さんがお困りになった、と言う話をどこかで
読んだことがあります。

確かに黒澤監督の初期の作品、「素晴らしき日曜日」でも
あらすじに大きく影響してくるシューベルトの「未完成」をはじめ
「楽興の時」なども使われていますし、
クラシック音楽への造詣が深い監督だったのですね。


2016年の武満徹さん没後20年のときに、
今回出版された映画音楽の大半を編曲し、録音したのですが、
その時にたくさんの武満さんの映画音楽の自筆スコアを参照できる機会を得ましたので
ついでに「どですかでん」のスコアも勉強してありました。


昨年、
延期となったハクジュ・ギターフェスタの代わりに
荘村清志さん、福田進一先生、大萩康司さんと
様々な組み合わせでデュオを収録したアルバム『DUO2』を製作するにあたり、
清志さんから『「どですかでん」を』と言うリクエストをいただいたので、
大きく手を加えてアレンジし直したものが
今回の出版バージョンの基になっています。


香津美さんとのバージョンから、
先に述べた今回の譜面のリハーサルマークBとCの部分のテーマを
自筆スコアからの編曲で増やし、
アドリブ・パートだった部分をアップテンポのテーマの繰り返しにしました。

僕の最初の編曲稿では、
イントロダクションに戻らず、速いテーマの後
今回の編曲譜の61~64小節のヴァンプを経て、
清志さんのゆっくりのテーマに直接戻る予定でしたが、
清志さんが『どうしても大介にもう一度美しいイントロを弾いて欲しい』
とリクエストされまして、ダ・カーポすることにしました。

結果として今の形になってとても良かったと思います。
荘村清志さんに大感謝です。


ところで、この清志さんとの演奏録音ですが、
清志さんが特にダ・カーポ後のメイン・テーマで聴かせてくださった
これ以上心を込められないくらいの
艶やかなヴィブラート、隣で伴奏していて涙がこぼれそうでした。

是非お聴きいただけましたら嬉しいです。
DUO2 - オムニバス(クラシック), 福田進一, 荘村清志, ソル, 鈴木大介
DUO2 - オムニバス(クラシック), 福田進一, 荘村清志, ソル, 鈴木大介
カテゴリー 音楽
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