特に好きなのは
ハービー・ハンコックがピアノを弾いている
「コーンブレッド」と「サーチ・フォー・ザ・ニュー・ランド」。
ハービー・ハンコックが紡ぎだす
かっこ良く、さりげなく、しかしながらよくよく聴くと
とても勤勉でファンキーなリズムのリフは
何度聴いても驚愕ですが、
そんなハービー・ハンコック フリークとしての
少年時代を過ごした野平一郎マエストロの指揮の下、
東京シンフォニエッタさんとの
リハーサルが3日間続きました。
『南海の始まりへの旅』
というこの作品は、
2012年に、大阪 いずみシンフォニエッタさんと野平先生の指揮で
初演したもの。
今回は改訂初演
ということで
曲の校正や細部のパッセージが加筆されています。
伊左治さんはブラジル音楽に造詣が深いので
ギターのパートは時々ボサノバのようなリズムが飛び出しますし、
オーケストレーションの金管楽器の動きなども、
どことなく中南米的なものを感じさせるのですが、
問題は(!?)
そこに伊左治さん独自の
日本の民俗音楽風な、
お祭り囃子や、
寓話的な、
おどろおどろしい肌触りのキャラクターに扮装して
仮装カーニバルしている声なき生き物とか、
もしくは遭難した森林の奥深くで
きつねの嫁入りに出くわしてそのまま
魅入られてしまうような幻惑的な感覚などが
織り交ぜられていて、
不思議な音楽空間をつくり出します。
暑い夏にぴったりの作品かもしれません・・・・
室内編成とは言え、
指揮者がいるオーケストラとのリハーサルは
一瞬一瞬がデリケートです。
ほんの少しのテンポの変化で聴こえてくるサウンドが変わってしまうし、
あるパートを少し音量的に前に出すだけで、
その他のパートの演奏の仕方や聴こえ方も変化してしまいます。
それぞれの音が1本の糸で編まれた網の目のようになっているので、
どこかを押し広げればどこかが縮まってしまいます。
そして、すべての目を大きくゆったりと編んでしまうと、
当然ですが、なにか大事なものがこぼれ落ちてゆきますね・・・
ですから、
とても少ない時間で、
本番でどのようなコミュニケーションを
オーケストラそれぞれの楽器、あるいは指揮者と取るのかを
確認しながら演奏しなくてはいけません。
現代音楽の場合、
普通のクラシック作品と何が違うかというと、
自分も含めて、極めて新鮮な響きと対話しながら
プランを練らなければいけないところですよね。
アランフェスとかだと、
オケの皆さんが曲についてそうとう詳しかったりするから、
かえってこちらが助けてもらってしまいます。
ただ、
目にするもの目にするものが新しい、というのは、
当然、麻薬的な刺激もあるわけで、
これはほんとうに心底楽しく、どきどきする瞬間で、
俺は今、生きてるな~、って感じです。
今回の伊左治さんの曲では、
ギターは部分部分の楽器群のキャラクターを
つなぐ役目もしているので、
冒頭のリー・モーガンのハービー・ハンコックではありませんが、
それぞれの楽器の達人集団である東京シンフォニエッタの皆さんたちに
のってもらえるようなグルーヴを野平マエストロと一緒に造り出せたら
とても有意義で、嬉しいだろうと思います。
明日のために最終的なパーツをもうひと磨きして寝ます。